突然 “計佑卒業宣言” をしたまくらは、計佑にキスをした。動揺する計佑は、 【収録話】
|
濱田浩輔氏の描く恋愛ファンタジー 「パジャマな彼女。」 の第3巻、「一番近くで」 です。
「週刊少年ジャンプ」 H24年30号〜40号、「少年ジャンプNEXT!」 H24年夏号掲載分を収録。発売日は2012年10月4日。
2巻のラストで、まくらが計佑にキスしたことと、芳夏の助力によって無事にまくらの “呪い” は解けたようなのですが…。
結局、肝心の “呪い” についてほとんど語られていないので、すっきりしない部分が大きいです。
芳夏にかけられた “呪い” というのがどんな呪いなのかとか、誰に呪いをかけられたのかとか、どうして芳夏とまくらの子供の
頃の約束が、今頃になって果たされてるのかとか、まくらが 「死なずに幽霊になるだけ」 で呪いの半分を肩代わり出来る理由
とか、芳夏とまくらの “誓い” の内容とか、計佑だけに姿が見えている理由とか、パジャマを着ている理由とか、「薔薇の棘」
とか 「ひまわり畑」 とか、とにかく色々なことが曖昧なまま、ハッキリせずに物語は次の展開に入ってしまいました。
芳夏にかけられた呪いは、死後も続いているようなので、単純に眠り続けるだけの呪いというわけではなく、百年の間成仏も
出来ずにこの世を彷徨い続ける…とか、そんな感じの呪いなんでしょうか。 そしてその呪いを解くには、榮治の 「真実の愛」
が必要だったけれども、その榮治は既にこの世にはいないために、呪いを解くことが出来ない、と。
但し、まくらが同じ眠り姫となることで、呪いの半分を肩代わり出来たようなんですが、子供の頃に約束したことが、高校1年の
夏になって突然果たされてるのは、芳夏が言った 『16歳 (高校1年生) までをずっと繰り返してる』 というのが関係してるのか。
…でも年齢が関係してるなら、まくらの16歳の誕生日に突然呪いがかかるとかになりそうだし、それは関係ないのかな。
そうすると、計佑と雪姫が仲良くしていた (ように見えた) ことにまくらが嫉妬して、恋心に気づき始めたのが原因なのか。
「指の痣が一周するまで」 という期間にどんな意味があるのかはわかりませんし、その間に果たすべき “誓い” というのも
よくわかりません。でも、誓いを果たせなければ死ぬところだったのを、計佑とキスしたことで元に戻ったのなら、“誓い” と
いうのは、計佑とまくらが 「真実の愛」 で結ばれることだった…ということになるんでしょうか。
だけど、二人の関係がまだそこまで進展していなかったために、芳夏が力を貸して強引に呪いを解いた、と。
しかし仮に 「真実の愛」 が誓いの内容だったとしても、芳夏がまくらとそんな “誓い” をする理由が見つかりませんけどね。
それに、芳夏の呪いを半分受けるためにまくらに呪いがかけられて、そのまくらの呪いを解くために芳夏が力を貸したという
のは、かなり意味がわからない状況だと思います。結局、自分への呪いを自分で解いてるようなものですからね。
計佑にだけまくらの姿が見えていたのは、やっぱり呪いを解ける唯一の相手だからってことなんでしょうか。そして、計佑と
雪姫の仲が接近することで、まくらの小指の痣が痛み出したのは、誓いを果たせなくなるという警告みたいなもの、とかかなぁ。
そもそも、死ぬこともなく幽霊になるだけで、芳夏にかけられた呪いが半分も解けるってのもよくわかりませんが、たとえ呪いが
半分解けたところで、それ以上呪いを解ける人が居ないのでは、あまり意味が無いんじゃないかと思ったりします。呪いに期間
が定められていて、100年の呪いを50年に出来たというなら、意味があるかもしれませんけど。
とりあえず、ラブコメとして計佑とまくらの仲を進展させるイベントとしては、「幽霊になる」 というのはそれなりに意義があった
かもしれませんけど、物語全体として見た場合、結局このイベントは何だったんだ…と感じる部分があることも否めません。
「パジャマな彼女。」 というタイトルに合わせて、まくらがパジャマ姿の幽霊になりましたが、結局 「なぜパジャマだったのか」
という部分にも触れられてませんし、呪いが解けてからはパジャマというアイテム自体、全く関係無くなってますしね。
そして、呪いが解けた後の展開ですが、連載終了がどの時点で決まったのかはわかりませんけど、天文部を作ってみたり、
新キャラ (アリス) を出してみたり、硝子とのイベントをこなしている時間があるなら、雪姫との関係を綺麗に終わらせる方に、
時間を使った方が良かったんじゃないかな、と思います。
2巻で、あれだけ雪姫と計佑の関係を進展させることに時間を割いて、計佑が雪姫の気持ちを 「受け止める」 と言ったので、
雪姫はその言葉を誤解している筈なのですが、まるであの出来事が無かったかのように物語が進んでおり、計佑はいつまで
経っても自分の気持ちに気づかない超鈍感体質。挙句の果てに、散々待たされた二人に辛い思いをさせることになっています。
しかもまくらへの劣等感から、自分で始めた交換日記を 『たかが交換日記』 、『そんなのどうだってよくね?』 とまで言って、
硝子まで傷つけるような嫌な性格になっていく主人公というのは、クライマックスに向けてさすがにどうかと思いました。
その結果が、告白への答えを引き延ばした雪姫への一方的な別れと、思いを伝え合わないまま引っ越してしまうまくらですし。
まくらが引っ越してから、四ヶ月という期間を空けたことにどんな意味があるのかわかりませんが、計佑なりに冷静に考える
時間を取った、ってことになるんでしょうか。色恋沙汰なんだから、変に冷静さを取り戻させるよりは、熱い勢いで行っちゃった
方がいい気もするんですが、まぁ最終的にはやっぱり計佑とまくらが結ばれるんだなと。
ただ、ヒロインの一人だった雪姫が、計佑にフラれて、その後すれ違ってもお互いに無視するような、惨めなポジションに
なってしまったのは、かなり残念としか言いようがありません。それなら多少強引でも、まくらと雪姫をもっと仲良くさせて、
最後に計佑の背中を押す役目を、まくらの母親じゃなくて雪姫にさせるくらいにした方が、個人的には良かったかな。
それに、たとえ思い出の中でも母親を登場させるなら、まくらに会わせてやった方が良かったと思います。
まくらが、芳夏の呪いを引き受けてまで幽霊になってもいいと言ったのも、母親に会いたいという願いがあったからでしたし。
最終的に。一番重要だと思っていた “呪い” 関連の伏線が、ほとんど明かされないままだったりとか、計佑がいつまで経っても
まくらへの気持ちに気づかないフリを続けたりとか、終盤にかけての雪姫の扱いとか、物語的には残念な部分が多かったです。
でも、絵柄は好きでしたし、ヒロイン達は可愛かったので、次回作にも期待したいですね。
―― パジャマな彼女。 第3巻 (了)
「パジャマな彼女。」 の画像の著作権は全て著作権者に帰属します : © Kohsuke Hamada 2012
【関連記事】 パジャマな彼女。 第2巻 濱田浩輔