原作:土塚理弘氏、作画:五十嵐あぐり氏による剣道コメディ、BAMBOO BLADE 【バンブーブレード】 の第13巻です。
掲載誌は 「ヤングガンガン」 。
【収録話】
第101話 「ウラとウメ@」 〜 第109話 「ウラとウメH」
最終章と言われている 「バニ学編」 ですが、開始当初は正直なところかなり興味が薄れてる時期がありました。
主役の筈の室江高校の面々は脇役に徹してるし、タマちゃんのライバルになると思われていた榊ウラを差し置いて、
突然出てきたアイドルの沢宮エリナを猛烈に掘り下げ始めてるし、肝心のウラとその周辺は迷走しまくってるし…。
そのままウラの復活あたりまでは特撮ヒーローを絡めた悪乗り気味の展開で、ここからどうするつもりなんだろうなぁと
不安に思ってたんですが…。実際に 「バニ学」 の収録が始まってから、やっと面白さが戻ってきたという感じでした。
それどころか前巻のラストでは、タマちゃんが初めて一本取られるという衝撃の展開で、一気に惹きこまれてしまいました。
そして今巻、同年代では初めて格上の相手と対峙して、本気になったタマちゃんが喫した初黒星。
しかも相手はウラではなくエリナ(山田梅子)だったということで、これにはさすがに一瞬とは言えショックを受けましたね。
それでも、徐々にエリナの背景が語られていくと共に、今までの伏線が繋がって来た頃には、タマちゃんの敗北すら納得
させられました。エリナは無敵のウラにすら勝ってしまう程の天才剣士だったわけですし、今巻では完全に主役になって、
タマちゃんの未来に影響を与える役割を担って登場したんだとわかってしまったので…。
当初はその役割こそウラが担っているんだと思っていたんですが、エリナがウラとの戦いの中で、剣道を続けることへの
「覚悟」 、そして 「大人の強さ」 を見せることで、今まで剣道に対して特別な情熱や感情を持っていなかったタマちゃんに、
「私は何で剣道をやっているんだろう――」 という疑問を持たせることになりました。
それだけエリナとウラの対決は見応えがある戦いでしたし、間違いなくこの漫画で描かれた中で最高の試合だったと
思います。そして、この二人の戦いに影響を受けたのが、タマちゃんや室江高校の面々、剣道小町に末野といった少女達
だけではなく、コジローや大江、亀崎などの 「大人」 たちも含まれていたことは、この戦いが作中においていかに重要な
局面だったかを如実に物語っていました。
エリナが全てを背負って見せた 「覚悟」 は本当に見事でしたし、「戻ってきた」 ウラを相手にしても 「勝ちたい」 という
気迫と剣道に対する情熱で勝利した部分は、読んでいるだけでも心を動かされる思いがしました。
惜しむらくはウラが完全な状態ではなかったことでしょうが、エリナ自身もしばらく剣道を離れていたので、それほどの
ハンデにはならないでしょう。タマちゃんを倒す役目も、ウラを倒す役目も一気にエリナがこなしてしまったわけですが、
とりあえず完全復活したウラと戦うことが、これからタマちゃんが進む道になるのかなと。
―― BAMBOO BLADE 第13巻 (了)
画像の著作権は全て著作権者に帰属します : © 2010 Masahiro Totsuka © Aguri Igarashi