原作:黒神遊夜氏、作画:神崎かるな氏の唯一無二の美少女×短剣道本格バトルアクション 「竹刀短し恋せよ乙女」 第1巻。
掲載誌は 「月刊少年エース」。
【収録話】
第一話 : 「雲耀入門」 | 第三話 : 「人体を箱にする」 | 第五話 : 「あらしのよるに」 |
第二話 : 「”アンブル” と ”ピアッフェ”」 | 第四話 : 「新手VS奥の手」 | 第六話 : 「エマヌエル・C・ローゼ」 |
以前は 「しなこいっ」 というタイトルで、「コミックラッシュ」 誌に掲載されていましたが、同誌が有料の電子書籍化するのと
同時に、2011年3月号で連載終了。そして、2011年8月号の「月刊少年エース」 誌から、タイトルを 「竹刀短し恋せよ乙女」
に変更して、連載再開となりました。
ということで、単行本1巻とはなっていますが、内容的には 「しなこいっ」 の続きからになっていますので、未読者には少し
わかり辛い部分があると思います。ただ、「しなこいっ」 が全話収録された 「完全版」(単行本4巻分+α) がこの1巻と
同時期に上下巻で刊行されてますので、これ以前の話に興味を持たれた場合は、そちらを読んでみることをお薦めします。
以下はネタバレ全開の感想となります。未読の場合はご注意ください。
短剣道と制体技の使い手・遠山桜が、その武器の性質上、相手にすると厄介とされる "長物" 使いを想定した稽古として、
龍之介の兄弟子にあたる長竹刀・オロチ使いの北河和巳に挑み、悉く返り討ちにされて来たのが 「しなこいっ」 までのお話。
そこで桜が、祖父である遠山荒馬から受け継いだ足捌き "跳ね馬" の欠点を補うために、「不可視の魔剣」 雲耀 【疾風】 の
継承者・榊龍之介の助言を受けて、"跳ばない跳ね馬" を習得すべく、『レッツ・エクササーイ』 が1巻の内容です(大雑把)。
桜が使う "跳ね馬" の短所は2つ。基本が継ぎ足(後足を前足の近くまで引き付けて踏み込む歩法)であるために、後ろ足の
動きに注視すれば、対処がしやすくなる点。そして、大きく跳躍することで軌道が山なりとなり、無駄な滞空時間が出来る点。
これを克服するために桜が目を付けたのが、龍之介の使う雲耀 【疾風】の地を滑るような足捌き。
雲耀 【疾風】の根幹は、身体の重心を両足にかけずに、身体の外に置いて "浮く" こと。軽く膝を曲げて椅子に腰掛けたような
姿勢を作り、前足の膝を "抜いて" 身体を自然落下させ、倒れこむ前に体幹部の筋肉を使って、後ろ足を引き抜いて前に出す。
……といった感じで良いんでしょうか。
まぁこの歩法で、相手に動き出しを悟らせないように出来るのは何となくわかるのですが、視界から 「消える」 ほどの
スピードで移動出来る、という部分については、まだ頭の中でよく理解出来てません。
実は桜が得意とする "跳ね馬" は、荒馬が 「襲歩」 と呼んでいた基本的なものに過ぎず、荒馬は "跳ね馬" の短所を
克服した、「アンブル」 と 「ピアッフェ」 という足捌きを使って、番号持ちの中でも恐れられていたとのこと。これらは全て、
馬術の歩法に使われている用語のようで、この辺はさすが "跳ね馬" と名づけられているだけのことはありますね。
馬の歩法は「常歩(なみあし)」、「速歩(はやあし)」、「駈歩(かけあし)」、「襲歩(しゅうほ)」 などがあり、常歩から順に
スピードが上がっていきます。「襲歩」 とは最も速い速度で馬が疾走する際の歩法で、脊椎の伸展を利用して歩幅を伸ばし、
一完歩に一回四肢が宙に浮く瞬間が存在する。桜の爆発的な跳躍は、馬が全速力で駆ける歩法に例えられてます。
「ピアッフェ」 は速歩の一種で、その場で足踏みをするような動作を行なう、前進を伴わない歩法のこと。
これを桜が、起動を隠すための "フットワーク" と呼んだのは、私だけの!納得!…いや、別に私だけじゃありませんけど。
「アンブル」 は、常歩と速歩の中間で、常に四肢の一本は地面に着いている状態の歩法。歩くより速く、かつ地面から
離れず素早く前進するという意味では、なるほど "跳ばない跳ね馬" に相応しい言葉と思えます。
この 「ピアッフェ」 から 「襲歩」 と 「アンブル」 の二択を仕掛けることで、『荒馬は恐ろしく強かった』 (猪口安吾談)。
「襲歩」 と 「アンブル」 2つの違いは、そのまま足捌きの違いでもあるようです。「襲歩」 が右足前から始動する "継ぎ足"
であるのに対して、「アンブル」 は 「ピアッフェ」 から移行する際に、『左足が前になっていた』 ということでした。
左足前の構えでは継ぎ足は出来ませんし、打突の時にはどちらにしても右足(後ろ足)を前に運ぶ必要があるのですが、
この前に出した左足膝の "抜き" から右足を前に引き抜いて、間合いを "跨ぐ" という動作こそが桜の 「アンブル」 であり、
右足前の 「襲歩」、左足前の 「アンブル」 の二択から攻撃を仕掛けることで、相手に動作の起こりを悟らせない効果があった
ということになるんでしょう。
つまり和巳は、桜が 「ピアッフェ」 を行っている時に、左足が前になっている瞬間は "跳ね馬"(継ぎ足) が始動出来ない
と知っていて、その瞬間に突きを仕掛けましたが、実際には左足前は 「アンブル」 の構えとなっていたために、桜に虚を
衝かれて秘策であった "雲耀破り" を使ってしまった…ということですね。一つ一つ整理して何とか理解出来ました。
「アンブル」 は足捌きで言うと、"歩み足" の一種ということでいいのかな…?素人なりの解釈では、この辺りが精一杯です。
ただ、雲耀 【疾風】 と 「アンブル」 の違いがどこにあるのかは、まだよくわかってなかったりします。
和巳の "雲耀破り" に関しては、さすがに想像もつかないですが、少なくとも桜との稽古で使うつもりは無かったと思うので、
不意を突かれても即応出来る技だということは言えそうです。まぁ、それでなければ虎春の 「不可視の魔剣」 に対処出来る
筈もありませんが、 『桜は既にその答えを言い当ててる』 とすると、『完全に捉えたと思った北河さんが目の前から消えていて』
という言葉あたりがヒントですか。ふんふむ…。
そして、遂にドイツから帰国した龍之介の宿敵、鳴神虎春と北河和巳の対決が実現。虎春の魔剣・雲耀 【迅雷】 については、
今回 「刀身を捻り込まず、打つと同時に下半身を連動して沈ませることによって加速する」 という特徴が明かされてます。
その性質上、得物(竹刀)は一撃しかもたないために、予備の竹刀を "鉄の処女" に入れて持ち歩いているということですが、
和巳がコントラバス・ケースに予備のオロチを大量に入れて持ち歩いてるのも、同じような理由なんでしょうかね。
一応 「前座」 として、メイド(エマヌエル・クレーメンス・ローゼ)との戦いもありましたが、全くもって相手にならず。
…というか、美咲優の話に出るまで、「戦うメイド」 だということすら知りませんでした。
兎にも角にも、やっと虎春の剣術が見れそうなのと同時に、和巳の "雲耀破り" と激突するという、いきなりクライマックス的な
展開となって来ました。さすがにここで虎春が敗れるという結果は予想出来ないですし、桜が和巳の帰りを楽しみに待ってる
という時点で、かなり敗北フラグが立っていますが、果たしてどうなることやら。続きが楽しみです。
ホントに、連載再開出来て良かったですねー。
―― 竹刀短し恋せよ乙女 壱 (了)
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