原作:黒神遊夜氏、作画:神崎かるな氏の唯一無二の美少女×短剣道本格バトルアクション 「竹刀短し恋せよ乙女」 第2巻。
掲載誌は 「月刊少年エース」。
【収録話】
第七話 : 「超長竹刀オロチ」 | 第十話 : 「後手」 | 第十三話 : 「終わりだよ」 |
第八話 : 「雲耀破れたり」 | 第十一話 : 「借り」 | 番外編 : 「日常の数ページ」 |
第九話 : 「M」 | 第十二話 : 「忍者ですので」 |
藤林祥乃の誘いに応じ、向かった先で仇敵・鳴神虎春との邂逅を果たした北河和巳。
そこでまず、「五番」 を倒して名声を手にしようと、勢い込んで挑んできたトンファー使いのメイド、エマヌエル・C・ローゼを一蹴し、
本命の虎春を引きずり出すことに成功したところまでが1巻のお話でした。
果たして、和巳の秘策 “雲耀破り” は、虎春にも通用するのか。
そして、エマのパンツの中に、「シュレディンガーの猫」 は “いる” のか “いない” のか。
それは、エマのパンツを開けて見るまでわからない……って、そこ重要じゃないから。
spoiler warning (ネタバレ注意)
和巳の持つ 「超長竹刀オロチ」 の “超” とは、その名の通り 「竹刀を超越した」 という意味が含まれているようです。
長さは、五尺三寸を二十センチ以上超え、二メートル近いオバケ竹刀と言われてるので、180cm〜190cmといった所でしょうか。
エマに対しては、このオロチを上段に構えていた和巳ですが、本命の虎春を前にして上段から中段 (正眼) に変化しました。
柄頭を相手に向けた上段の構えは、オロチの間合いを相手に計らせない効果がありましたが、見物している虎春の目の前で、
三度の打ち込みを見せてしまっては、防御を捨てた上段の構えを取ってまで、間合いを隠したところで既に意味は無い。
そこで、刀身を晒すのを承知で正眼に構え直した…と “思わせる” のが実は和巳の狙いであり、『真に隠したかった』 のは、
正眼の方だったようです。とは言え、虎春が言ったのは 「構え」 自体を隠すという意味では無いでしょうし、和巳の目的は
やっぱり “雲耀破り” を隠したかった、ということでいいんでしょうかねぇ。
まぁ、例え最初から正眼に構えていたとしても、エマ相手に “雲耀破り” を使うことは無かったと思いますが。
ただ、“雲耀破り” というのが、虎春が 「伸地」 と呼んだ移動術だけのことなら、特に中段に構えてなければ使えないという
代物でも (多分) 無さそうなので、中段からの諸手突き連打 ⇒ 伸地 (雲耀 【疾風】) ⇒ 左片手突きまでの一連の攻撃の
流れを以って “雲耀破り” と呼ぶということになるんでしょうか。
桜が 『完全に捉えたと思った北河さんが目の前から消えていて』 というヒントを残した “雲耀破り”。牽制を兼ねて打ち込む
最初の諸手突きを弾かれた後、一歩後ろに下がる動作を、オロチを返す際の重さを利用して加速する移動術。理論的には
龍之介の 【疾風】 と同じながら、虎春によれば 『雲耀 (の速さ) には至れていなかった』 と言われています。
本来、相手との距離を取ることは、守りの意味合いが強いと思いますが、相手が攻撃のために距離を詰めて来ていることと、
和巳の長身や超長竹刀のリーチを利用することで、即座に攻めに転じることを可能としているようです。更に、諸手突きに目を
慣れさせたところに、片手突きを混ぜることで、間合いと速度を相対的に変化させて見せることが出来る、と。
和巳の敗因…というか誤算は、奥義である “雲耀破り” を、虎春が 「雲耀を使う前に」 見せてしまったこと ―― でしょうかね。
その威力故に、竹刀が一撃しかもたないと言われる虎春の雲耀 【迅雷】 ですが、虎春が予備の竹刀をアイアン・メイデンに
入れて大量に持ち込んでいたことで、『初太刀を外すことに専念する』 という和巳の目算は外れました。ただ、桜が相手でも、
“アンブル” で不意を突かれるまで使わなかった “雲耀破り” を、虎春の通常攻撃から惜しみなく使ったのは何故なのか。
和巳自身が言ってる通り、虎春には 『龍之介ほどの追い足は無い』 ということなので、桜の “襲歩” すら問題にしなかった
「オロチの結界」 で対処出来そうにも思えますが、虎春が本気になる前に、ケリを着けるつもりだった…ということなのかなぁ。
それとも、桜が到達していない領域に、虎春が行き着いてるために、使わざるを得なかった…ということなんでしょうか。
まぁ、左片手突きが決まった時点で勝負が着いていれば、計算通りとも言えるんですけど、その後の雲耀 【迅雷】 を見て
しまうと、虎春が “右蜻蛉” に構えた時に、和巳が “雲耀破り” を使ったところで、本当に通用したのかどうかはわかりません。
攻撃をかわす 【疾風】 を使う以前に、最初の諸手突きを叩き落されてしまっては、どうしようも無いですしね…。
鳴神虎春の魔剣・雲耀 【迅雷】 は、母親の寅が 「龍神サカキ」 を倒したのを見てもわかるように、並大抵の速さで無いことは
わかってましたが、「あの」 面木乱歩を叩きのめしてるくらいですから、パワーの面でもやはり人並外れたものがあるんでしょう。
その衝撃は、竹刀を打たれただけで、その名の通り 『まるで感電したかのように痺れて』 しまうようです。
和巳にとっては、八年間の全てを無意味とされ、八年前から続く思いの全てを見透かされ、それらを完膚無きまでに否定され、
蹂躙され、破壊され、そして全てを失ったと言っても過言では無い、残酷な結末が待っていました。
確かに虎春の言う通り、和巳の八年間の怒りと虎春当人には何の繋がりもありませんし、自分自身への怒りを虎春へのそれに
転嫁していると言われれば、そうかもしれません。それは龍之介にとっても同じことが言えるのですが、龍之介はかつて虎春に
対する感情を “未練” と言いました。
その言葉が意味するところはともかく、和巳を打ちのめし、桜を傷つける今の虎春への感情は、未練では済まないでしょうし、
またそれは虎春がそう仕向けているようでもあります。「龍之介が愛する者を傷つける」 ことで、龍之介から全てを奪い、復讐に
燃えた “龍神” を叩き伏せ、屈服させる事に至福の喜びを見出す…とでも言うのか、歪んだ 「愛情」 を龍之介に向けています。
虎春お嬢様の戦い方は、今回初めて見ることになりましたが、ここまで 「強い悪役」 ぶりが様になってるのは xopoшo!です。
虎春はよくこの言葉 (xopoшo) を使いますけど、日本人離れした容姿といい、異国の血が混じってるんでしょうか。
個人的に尊大な性格のロリは好みですし、圧倒的な強さにも痺れるので (迅雷だけに)、虎春お嬢様の 「禍々しい可愛さ」 は
かなり大好きです。まぁ、中学生なので “ロリ” と言いましたが、虎春は美人さんなので言うほどロリという感じはしませんけど。
しかし、虎春が自らの雲耀 【迅雷】 を、「虎の子」 と言ったり、和巳が 『間合いに入らなければ魔剣も張子の虎』 と言ったり、
“虎春” の名前にかけて言ってるのかわかりませんけど、この辺りはなかなか気の利いた言葉遊びですね。
虎春お嬢様が見せた圧倒的な存在感で、少し影が薄くなりそうな主人公の一人・遠山桜ですが、今回は 「経済的な忍者」、
藤林祥乃との死闘を演じています。
桜と言えば、相手の “返し” も見越して、二手三手先を読んだ戦い方が得意な筈ですが、“飛び祥乃” のトリッキーな戦い方に
翻弄され、後手後手に回っている状態な上に、“真剣” を前にして本能的に恐怖を感じているためか、いつものダイナミックな
動きが、影を潜めてしまっているようです。
更に、習得したての新技 “アンブル” も、忍者ハットリ君ばりの鎖帷子で防がれて決定打となり得ず、頼みの綱だった関節技も
決めることが出来ずとあって、徐々に閉塞感が漂い始めています。それでも持ち前の直感で、何とか致命傷を避けている桜では
ありましたが、十三話の最後では絶体絶命の状況に追い込まれてしまいました。
ここから桜の一発逆転への布石も見えて来ませんが、ここで簡単に敗北する主人公というのも、少し残念な感じなので、何とか
突破口を開いて欲しいところです。ただ、「番号持ち」 を3人も屠ってきた祥乃が負けるところも、想像し難い部分はありますが。
さてさて、この戦いの行方も気になりますが、龍之介、和巳、安吾、虎春、乱歩が手負いの状態とあって、“次” は誰が戦う
ことになるのかも、予想が難しいです。早く続きが読みたいところですが、3巻の発売はいつ頃になるんでしょうねぇ。
―― 竹刀短し恋せよ乙女 弐 (了)
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