恋染紅葉 第2巻 坂本次郎/ミウラタダヒロ



原作:坂本次郎氏、漫画:ミウラタダヒロ氏による、格差恋愛ストーリー、「恋染紅葉」 の第2巻。「スキャンダル!!」 です。
掲載誌は 「週刊少年ジャンプ」。


【収録話】

シーン6 : 「ナナと紗奈」シーン9 : 「スキャンダル!!」シーン12 : 「海?海!海!?」
シーン7 : 「次に会う時」シーン10 : 「3人デート」特別読切 : 「ふぁみドル!」
シーン8 : 「学校で!?」シーン11 : 「ドキドキした」



う〜ん…。単行本の帯には、「三角関係」 はじまる ―――― !! と書いてあるんですが、正直言って始まってない気がします。


1巻を読んだ時に、ヒロインを2人登場させても、主人公 (翔太) の気持ちがどちらかに確定しちゃってると、気持ちが向けられて
いない方のヒロインは、存在意義が見出せなくなるんじゃないか…と危惧していましたが、この2巻を読んでみて、その通りに
なっちゃったかなぁ、と感じました。


翔太の態度は最後まで一貫して 「紗奈ちゃん、紗奈ちゃん、紗奈ちゃん」 。そこに由比の割り込む余地など微塵もありません。
実際、由比が仕掛けた恋人役のお願いも、翔太に全くその気がないこともあって、恋人役の演技すらしてもらえない状況です。
紗奈のマネージャーによって、紗奈と二人きりにしないよう利用される程度の効力しかなく、翔太との関係は何も進展無し。


さすがにこれで、由比をヒロインの一人として、紗奈と翔太との 「三角関係」 が始まってるとは、とても言えないと思います。
シーン12のラストを見る限り、紗奈を誤解させることで、話を遠回りさせるための役回りしか、与えられていない気がします。



これはやっぱり、翔太と紗奈の気持ちが早い段階で確定しちゃってるのが原因でもあるんですが、脇目も振らず好きなヒロイン
にまっしぐらな主人公と、最初から主人公に気があるヒロインという構図だと、他に主人公のことが好きな女の子を登場させた
ところで、道化役しか演じさせようが無くなる気がしてしまいます。これは別に、この漫画に限ったことではありませんが。


話の善し悪しや、面白いか面白くないかは別にして、翔太がもっと優柔不断だったり、紗奈の気持ちが最初は翔太の方を
向いていなかったりすれば、由比に別の役割を演じる余地も残されていたかと思うんですが、 「恋染紅葉」 の場合は紗奈と
翔太はどう見てもお互い好きあっている両思いの関係で、お互いの性格と立場的に言い出せないだけに見えます。


だから由比がどんなことをしても、話は動かないし、三人の関係は何も変化しないんじゃないかな、と。シーン10の途中で
紗奈達のクラスメート役、と言われてた女の子 (春日小鳥?) が、今後登場しそうな雰囲気ですけど、これ以上ヒロインを
増やしても、更に収拾つかなくなるだけのような気がしなくもないです。


これで新しいヒロインに、翔太が浮気しそうな展開にでもなったとしたら、もっと由比の立場が無くなりますしね。



まぁ、自分が由比派だから少し厳しい見方をしちゃう…というのもあるとは思うんですが、最初から結果の見えてる試合でも、
ドキドキしながら諦めずに一生懸命頑張る由比の姿というのは、やっぱりアンダードッグ効果じゃなくても、応援したくなります。
これは、紗奈派の側から見たら、全く逆に由比が邪魔者としか映らないのかもしれませんけど。


ちなみに、自分は別に紗奈が嫌いなわけではありません。あくまで由比の方が好きなだけであって、紗奈も可愛いと思います。
ただ、紗奈が翔太を好きになったきっかけが、紗奈が男に免疫が無いせいで、必要以上に翔太を意識してドキドキしてしまった
という 「吊り橋効果」 的に見えてしまうところがあるのも否めません。


読み切りでは、紗奈の相手役の俳優 (桜ヶ丘和臣) の軽さを見せることで、翔太の純粋さと誠実さを強調することに成功して
いたと思いますが、連載では比較対象が無い分、それこそ翔太じゃなくても良かったんじゃないか、と思えてきてしまいます。


だからこそ、紗奈のライバルになりきれずに、由比の立ち位置が完全に浮いてる状態に見えるのが、ちょっと残念に感じます。
まぁ、由比が翔太を好きになったきっかけ (子供の頃に翔太が影ながら自分を助けてくれたから) も、ありがちですけどね。



連載の方でも、ドラマ 「恋染紅葉」 の撮影は始まってますが、相手役の俳優が登場してないのが、どうなってるのかなと。
“恋人役” の練習をしたのに、それが演技に役立つシーンが無いのでは、翔太との練習自体が意味を失ってしまいますし、
演技力の向上を見せることで、マネージャーを納得させるくらいのことは、しても良いんじゃないかな、と。


とりあえず、2巻終了時点での感想としては、結末は紗奈と翔太のカップルで見えちゃってるので、後はどれだけゴールまで
遠回りさせるか、だけのように見えます。主人公が一途でブレないというのは格好いいとも言えますけど、物語的にはそれ以上
広げようが無いので、長引かせると冗長に感じてしまう可能性もあります。


そういう意味では、読み切りのページ数で一度完結した物語を、再構成する形となっていますので、そう感じてしまうのも
仕方ない部分があるかもしれません。今のところ、残念ながら読み切りを上回る面白さになっているとは思いません。


そして、今回も読み切りが掲載されています。2011年のジャンプNEXT!春号に掲載された、「ふぁみドル!」。
ヒロインが芸能人で、主人公が女の子に免疫の無い少年という点では、 「恋染紅葉」 の原型となった作品かもしれないです。


タイトルの 「ふぁみドル!」 は、家族 (ファミリー) とアイドルを繋げた言葉でしょうね。



―― 恋染紅葉 第2巻 (了)




「恋染紅葉」 の画像の著作権は全て著作権者に帰属します : © Tsugirou Sakamoto 2012 / © Tadahiro Miura 2012



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