射〜Sya〜 第2巻 大塚志郎



大塚志郎氏著の “元祖” ガールズ弓道ドラマ!! 「射〜Sya〜」 の第2巻です。
掲載誌は 「月刊ビッグガンガン」。


【収録話】

六立目 : 「5人目の弓士」八立目 : 「メイド喫射」十立目 : 「矢球対決」
七立目 : 「弓道部の危機」九立目 : 「遠的と伸び詰め」



1巻の最後で、正弓が初めて1射的中させて成長したところを見せたので、そろそろ練習試合でも始まるかなぁ…なんて
思ったりもしてましたが、弓道はそんなに甘いものではありませんでした。まだまだ正弓には試合に出る前に覚える
ことがたくさんある…ということで、2巻でも正弓が “綾園の弓士” になるために奮闘する姿が描かれています。


六立目は 「5人目の弓士」。弓道の団体戦は主に5人で行われることがわかりますが、4人でも1人分不戦敗 (?) になる
だけで、出場することは可能なようです。しかし4人対5人では勝負になる筈もなく、団体戦は予選敗退してしまいました。


逆に個人戦では、美射が優勝、祈が5位と好成績を収めており、綾園が決して弱いチームでは無いことがわかります。


この回では新キャラとして、正弓の妹・千剣 (ちづる) が登場しています。"バカ" で "ドジ" で "貧乳" の姉に対して、
"秀才" で "器用" で "巨乳" な妹。某軽音楽部4コマ漫画の、主人公姉妹に似ていなくもないです。



七立目 「弓道部の危機」。生徒会長から弓道場の取り壊しが言い渡され、事実上廃部の危機を迎える弓道部。
しかし廃部の話を聞いて、珍しく 「おっぱい」 ではなく、「弓道」 そのものへの情熱を見せる正弓。


先輩達の試合を見たことで、『弓道ってかっこいいな』 と思うようになり、『試合に出てみたい』、『私もいつかあそこに立ちたい』
という目標が芽生えたようで、正弓の気持ちが少しずつ変化していることが窺えます。


この回では、「射の再現力」 についての解説が入ります。"会" の状態の時、「口割り」、「ねらい」、「胸弦」 の3か所を
チェックし、これを毎回正確に合わせることで、常に同じ射が出来る筈だという、弓道理論。


但し武道である以上、中てるための 「技術」 よりも、「精神」 の鍛錬が大事という祈の言葉が本来は基本となるのでしょうが、
マナが言うような 『学生弓道は中たりが全て』 という身も蓋も無い考え方も存在するようですね。



八立目 「メイド喫射」。美射と祈の不在で、中止になりかけた 「メイド行射」 の射手に、正弓が自分から志願します。


この積極性もさることながら、正弓が 「弓道の魅力を伝えたい」 、「弓道場を守りたい」 という強い意欲を見せるようになり、
「綾園の5人目の弓士」 としての自覚が出てきたことを感じさせます。


さらに、人前での行射で的中させるという貴重な経験もして、試合に向けても着実にステップアップしているようですね。


ただ、弓道場の取り壊しをめぐって生徒会長と対立してた筈なのに、最終的にその話題に触れずに終わっちゃったのは
残念でした。1位になって取り壊しは無くなったんでしょうけど、最後に生徒会長とのやり取りもあれば良かったと思います。



九立目 「遠的と伸び詰め」 。「遠的」 というのは、文字通り遠くの的 (近的の約倍) のことで、「伸び詰め」 というのは、
「伸び合い (弓をよーく引っ張る)」 と 「詰め合い (フォームが崩れないよう体全体に気を配る)」 のことだそうです。


正弓の成長に合わせて、だいぶ弓道の解説も本格化して来ましたが、今回の教訓は 『人に矢があたったら命にかかわる』
ということでしょう。当然ですけど弓は本来 "武器" ですから、矢道に入るなんてことは自殺行為に他なりません。


十立目 「矢球対決」 。"弓道部員のおっぱい" と "グラウンドでの朝練権" を賭けて、野球部と "矢球" で勝負します。


単純に "矢球" で勝つだけなら、美射部長で勝負をつけられたものを、「一歩間違えれば弓は危険なもの」 ということを
伝えるためには、そのことを身を持って知ってもらうのが一番いい…ということで。大将を正弓にした決着のつけたかも、
伏線として野球部のエースに恐怖を植えつけておく美射の仕掛けも、良く出来てると思いました。



1巻から "脱衣競射" とか "メイド喫射" とか "矢球対決" とか、全く弓道と接点の無さそうなものを、弓道に上手く絡めて
話を作ってるのは、凄いセンスだなぁと思います。内容も、お色気とかネタに走ってるように見えて、弓道部分はしっかりと
描かれてるので、素人にも分かり易いですし、弓道に興味も湧いてきます。


それに、初心者で弓道に興味も無かった正弓が、毎日の練習を通して少しずつ弓道の面白さを知り、試合に出たいという
目標を持つようになりと、一話毎に成長する姿を見せてくれるのも好感が持てますし、正弓に感情移入することも出来ました。


相変わらず 『おっぱいを大きく』 が根底にあるのは変わりませんけど、それだけではなく 『綾園の5人目の弓士に』 という
部分も徐々に大きくなってきて、正弓が弓道を好きになっていくのが伝わってくるのが良いと思います。


個人的には、八立目の 『もっと練習して、早く綾園の5人目の弓士にならなきゃ』 という言葉に、正弓の前向きな気持ちの
変化が表れていて、凄く好きなセリフでした。



―― 射〜Sya〜 第2巻 (了)




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