射〜Sya〜 第1巻 大塚志郎



大塚志郎氏著の “元祖” ガールズ弓道ドラマ!! 「射〜Sya〜」 の第1巻です。
掲載誌は 「月刊ビッグガンガン」。


【収録話】

一立目 : 「弓道部へようこそ」三立目 : 「弓道店と笄」五立目 : 「夏合宿」
二立目 : 「弓道とおっぱい」四立目 : 「脱衣競射」



物語は、"バカ" で "ドジ" で "ド貧乳" という残念三重苦を持つ主人公・矢澤正弓が、弓道部の部長で錬士五段の腕前を
持つ、間堂美射にその類稀なる 「才能」 を見込まれて、弓道部に勧誘されるところから始まります。


『弓を引くのに乳は邪魔以外の何者でもない』 という考えを持つ美射にとって、正弓の貧乳は正に神に選ばれし 「才能」。


しかし貧乳にコンプレックスを持つ正弓にとっては、貧乳を指摘されるのは屈辱以外の何ものでもありません。そこで、それを
逆手にとった副部長の高橋学は、『弓道をすれば胸が大きくなる』 という大嘘をおバカな正弓に信じ込ませ、めでたく廃部寸前
の弓道部に、"弓世主" が誕生することになりました。



この漫画は、主人公の正弓が全く弓を知らない素人である状況を利用して、弓道の知識を少しずつ丁寧に解説してくれてます。
これは、読者の大半が実際に見たこともないであろう武道を扱う漫画として、個人的には正解だと思いますし、ありがたいです。


ルール自体はそれほど複雑では無さそうなので、いきなり試合などを始めてしまってもそれなりに楽しめるとは思いますが、
やはりせっかく未知の世界に触れる機会を得たのですから、ルール以外の弓道用語や様々な知識にも興味がありますし、
毎日の練習を通して上達していく 「過程」 を知っていた方が、今後行われるであろう試合への感情移入も変わってきます。


それに正弓は (胸を大きくするために) 努力はしますけど、いわゆる 「天才」 では無いので、いきなり試合に出て
皆中などをやらかしてしまうと、いくらフィクションとはいえ現実味が無さ過ぎますしね。



一立目では、弓道部員の顔見せと、弓道の基本動作である 「射法八節」 が描かれてます。射法八節とは、足踏み、胴造り、
弓構え、打起し、引分け、会、離れ、残心の八節からなる射法。それぞれの節についての細かい説明などはありませんが、
素人でも文字を見れば "会" 以外は大体どんな動作を意味する言葉なのかは、予想出来そうです(合ってるかは別にして)。


ちなみに "会" とは、「引分けが完成 (弓を引き切った状態) され、矢は的を狙っている状態 (Wikipediaより)」。


二立目は、弓道にも基礎体力が必要になるという話。長距離走を走り切るような体力は(たぶん)必要無いと思いますが、
やはり弓を引くのも矢を射るのも、それなりに力が必要でしょう。特に弓を構えて、引いて、矢を射るまで、一定の姿勢を
保つためには、体幹を鍛える必要があるように思えます。



三立目は、弓道で使用する道具(弓具)の話。やはり弓は高価なものだというイメージがありますが、1年くらいかけて
自分に合った弓の強さを見定めるのが普通、というのはなかなか興味深かったです。何かを始める時に、まず形からと
言って、道具を先に揃えてしまうようなこともありますが、弓道ではそれが通用しないってことでしょうね。


四立目は、競射 (試合形式の練習) が行われますが、弓道は的のどこに中たっても点数は同じなんですね。この辺は
うろ覚えのアーチェリーとごっちゃになってるかもしれません。しかし試合での皆中は、高校3年間で出来ない人の方が
多いほど難しいんですか…。実際に高校生くらいの競技者の的中率ってのは、どのくらいが平均になるんでしょうか。



五立目は、美射の叔母が経営する熱海の旅館での夏合宿。ここで行われるのは百射会(試合形式で弓を百本引く練習)。
徐々に練習内容がステップアップしているのが感じられます。そして、部員各個に課題が与えられ、それぞれの欠点克服
にも取り組みだしました。


正弓はとにかく弓を引くのに慣れること。チカはもっと頭を使って弓を引くこと。身体の弱い祈は、もっと体力をつけること。
ただ、チカより的中率の低かったマナの課題が出てなかったなぁと思ったら、最後の肝試しが精神修行ってことなのかなと。


そして、この回では正弓の気持ちにも大きな変化が見られました。今までは 『おっぱいを大きくしたい』 の一心で弓を
引いていた正弓でしたが、初めて的中したことで 『的に中たるってすごく気持ちいいんですね!』 と弓道の楽しさも
少しずつですが理解し始めているようです。



やっぱり、勉強でもスポーツでも、出来ないよりは出来た方が楽しさを感じられるわけで、その 「楽しさ」 を伝えるために、
1巻の最後でこの台詞を持って来たというのは、とても重要だったと思いますし、正弓が改めてここからスタートするという
最初の一歩 (一矢) だとも思えます。いつまでも 「おっぱいのために」 だけでは、成長もありませんし。


これでやっと、練習試合などにもスムーズに入っていけるのではないかと思いますが、次巻予告を見るとメイド喫射(笑)とか、
野球部との対決とか、まだまだ試合は先になるみたいですね。


「カイチュー!」 なんかは、試合だと結構シリアスに描かれたりしますが、「射〜Sya〜」 の試合はどんな風になるでしょうか。
この漫画は今のところ 「お色気弓道少女コメディ」 という感じですが、試合では熱い展開が見られるのを期待したいです。



―― 射〜Sya〜 第1巻 (了)




「射〜Sya〜」 の画像の著作権は全て著作権者に帰属します : © 2012 Shiroh Ohtsuka



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