Oz-オズ- 第6巻 刻夜セイゴ/岩井恭平



原作:岩井恭平氏、作画:刻夜セイゴ氏のSFアクション漫画、「Oz-オズ-」 の第6巻、最終巻です。
掲載誌は 「月刊コミックアライブ」 。


【収録話】
#25 : 「取引」
#26 : 「決断」
#27 : 「竜巻」
#28 : 「Ozの魔法使い」




少なくともあと1、2巻は続くと思ってただけに、今巻で完結だと知った時はちょっと意外に思いました。


物語としては綺麗に終わらせてると思いますが、終盤になってちょっと駆け足気味に感じたことは否めません。
最終的にはドロシーの選択によってGAIAを初期化する 「竜巻」 が使われたわけですが、 竜巻はもっと取り返しの
つかないような結果を招くのかと思っていたら、初期化されるだけでバックアップでの再起動が可能だったんですね…。


魔法使いはドロシーにOzを与えて 「この世界の未来を選んで欲しい」 とすべてを委ねたわけですが、これは同時に
「ドロシー自身の未来も自分で選んで欲しい」 という意味も含まれていたんじゃないかなと思います。



ドロシーが 『GAIAの双子みたいなもんだ』 …と言ってるように、ドロシー=GAIAと考えるなら、痛みを恐れて現実世界から
逃げることで、魔法使いのようになる未来(変わらないGAIA)を選ぶか、痛みを知る勇気を持って現実世界で目覚める未来
(新しいGAIA)を選ぶか。それを、ドロシー自身が判断して選んで欲しい…ってことだったんじゃないかなと。


そしてそのためにドロシーに用意されたのが、目覚めるのに必要な 「痛み」 を与えるための 「Ozカード」 であり、
「痛みの無い」 世界を変えるための 「竜巻」 ってことだったんでしょうね。


魔法使いとドロシーの関係は明言されませんでしたけどやっぱり母娘なのかな?
金堂との取引によって、世界連合に引き渡されるみたいですけど、今の状態でも魔法使いに何か出来るんでしょうか。
世界連合が意図すれば、GAIAのような仮想空間を魔法使いに再構築させることも可能ってことなんですかねぇ…?


魔法使いがプログラムのソースコードを吐き出すだけの存在だと仮定すれば、それをオブジェクトコードに変換する
コンパイラの役目を持つのが、魔女を含めた賢人だと考えられますけど…この解釈で果たして正しいのかどうか。


ただ、巻末のショートストーリーでドロシーが 「魔女」 と会った時の話が書かれてます。これを見るとドロシーは魔女が
変死したことを過去にニュースで知っていたようですが、4巻で金堂から魔女が死んだことを聞かされた時とかなり反応が
違ってるのはどういうことなんだろう…。



キャラクター的には 「Scarecrow」 は、オズの魔法使いからすると 「Lion」 や 「Tin man」 と同等に重要なポジションに
居るはずなのに、名前も性別もはっきりしないままフェードアウトしてしまったのは残念でなりません。


そして、ユーリの友達としてずっと活躍の時を待ってるのかと思っていた夏やマサムネも、結局最後までアウトサイダーの
ままでした。夏は恋愛面でも土俵にすら上がらせてもらえませんでしたし、二人とも立ち位置が浮いたままに感じました。
同様にもう少しアクション面で活躍の場があるかと思っていた舞桜も、最終巻には出番すらありませんでした。


ハルハルに関しては、どうして13歳の少女がアヴェンジャーとして選ばれたのかが最後まで謎でしたが、まぁその辺は
どうでも良かったのかなと。別れ際にユーリがハルハルに言った 『大丈夫、また会える』 という言葉で、後日談的なものが
あるのかと思いましたが残念ながらありませんでしたね。それでもハルハルは幸せになれたと信じてますが。



ハルハルとの再会もそうですが、金堂が魔法使いの 「代わり」 としてドロシーに目を付けてたり、火遊が現実世界で金堂に
捕まった場面も出てきてないので、続編が作れそうな余力は残してる気がします。出番の少なかったScarecrowを始め、
夏やマサムネ、舞桜にも活躍の場を与えられそうですし、王華虎あたりも再登場させられるんじゃないかと思います。


その場合のタイトルは続編的に 「オズの虹の国」 ?…でもそれだとドロシーが出てこない可能性がありますけど(笑)。



―― Oz-オズ- 第6巻 (了)




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